2018. 04. 22  
『アメイジング・グレイス』を授かっているのよね。


『虹の岬の喫茶店(森沢明夫:著)』です。



おいしいコーヒーとお客さんの心に寄り添う音楽を提供してくれる音楽のソムリエ。
喫茶店の店長さんがソムリエの連作短編集です。


第一話、妻を病気で亡くしたばかりの男性とその娘が岬の喫茶店にやってきます。

大切な人を亡くした落胆と哀しみと憔悴。
そんな男性に音楽のソムリエは、「アメイジング・グレイス」を静かに流します。

ソムリエさんもずっと前にダンナさんを亡くしているのでした。


「アメイジング・グレイスって、驚くほどの恩恵、って言うのね、直訳すると」
「人間って、生きているうちに色々と大切なものを失うけど、
でも、一方では、『アメイジング・グレイス』を授かっているのよね。
そのことにさえ気づけたら、あとは何とかなるものよ」




自分にとっての「アメイジング・グレイス」に気づく・・・。
小説のなかの男性は、娘の存在がアメイジング・グレイスだと気づきますが。

もしも、気づけないとしても、
自分が「アメイジング・グレイス」な存在だったことは事実だなあと。


どんな人にも親がいて。
自分が生まれた瞬間、どんな親も安堵と喜びしかなかったはず。

親にとって、自分はアメイジング・グレイスな存在だった。
こう感じるだけでも、絶望しなくていいと思えるのです。


それにアメイジング・グレイスな存在って、
人に対してだけじゃなくても構わないですよね。

すごく大事にしてる写真集やCDがアメイジングでもアリかな。
恩恵って、けっこうたくさんもらえてるんじゃないかと思えます。


音楽のソムリエがほかに選んだ曲は・・・

ガールズ・オン・ザ・ビーチ(ザ・ビーチ・ボーイズ)
ザ・プレイヤー(ドニー・マクラーキン、ヨランダ・アダムス)
ラブ・ミー・テンダー(エルヴィス・プレスリー)


ここでは「アメイジング・グレイス(ケルティーク・ウーマン)」の動画を載せておきます。
パグパイプの演奏が望郷の印象を与えてくれます(5分)。





いじわるな人や嫌な人間は出てこない。
だからといってのほほんと生きていられるわけもなく。
いい人にも辛いことはやってくるんですよね。
それでも手にしている「アメイジング・グレイス」を大切にするために、
生きられるだけ生きていくんですね。



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2018. 04. 21  
時間は私たちを悲しがらせたり、うれしがらせたり、
懐かしい気持ちにさせたり・・・と、深く心を揺さぶるんだと思います。

  (『いわずにおれない』まど・みちお)




時間が私を悩ませています。
小学2年生の長男の算数。

最初の単元でつまづいているのです。
たとえばですね・・・

8時に家を出ました。
学校に8時15分に着きました。
何分歩きましたか?

給食を食べ始めたのは12時です。
家に帰ったのは3時20分です。
食べ始めから家に帰るまで、何時間何分ですか?


これが分からないのです。


時計を読めるのにわからない?
なんで?って思ったんですけど、

時間と時刻は違う、ということが分かっていない。
ということが分かりました。


けっこう難しいです。

子どもには、「今」しかないんですね。
今を一生懸命生きるのが上手やなあと思っていたんですが、
今しか知らないからなんですね。

去年のことを「昔はさあ~」なんて言ったりするのを聞くと、
なんて生意気な♪なんて感じるのですが、

ちょっと前のことも昔も、今じゃないってことが共通してて、
それしか分からないんですね~。

じゃあ、今しか分からないほうが毎日を真剣に、
時間を無駄にしないで生きられるのかなあ・・・


若い頃、僕の時間は未来へ向けて無限にあるように思えた。
今、僕は終末の時間から逆算する。
すると、人も風景も、そう、何もかもが違って見えてくる。
僕は、疾走する。

  (蜷川幸雄)


この想いが分かるようになりますよね。
終わりの時間にどの数字を当てはめるかは分かりませんが、
時間の逆算をして、今を大切にする。

これが大人のやりかた。
時刻が分かるだけだと、今しか存在しなくて。

時間は積み重なっていくもの、と理解することで、
思い出や未来を、
大切にできるものが増えるのかなとか想います。


感動せずにおれないのは、
限りあるいのちである私たちの出会いです。
無限の空間と永遠の時間の中で、
極微のひと粒が別のひと粒と同じ場所、同じ時にい合わせるなんて、
本当に奇跡のようなものでしょう?

   (まど・みちお)



ロマンティックになってる場合じゃなかった。
本当に分からないと困るのでした。

とりあえず、24時間を定規のようなメモリで表したものを使ったら、少し分かってきたみたいでした。

この定規みたいなものが時計やねん!っていうのが
子どもの頭の中では「?」なんですけどね。

針が同じ円をぐるぐる回ってるだけで、「時間がすすんでる」、というのが不思議でたまらないみたいです。

はじめて時計を作ろうと考えた人は天才ですね。
あの円と針とメモリだけで時間を表そうと思いついたのですから。



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2018. 04. 20  
脳みそがあってよかった電源がなくても好きな曲を鳴らせる
   (岡野大嗣:1980年生まれ)

『桜前線開架宣言(山田航:編著)』です。



いろんな歌人の短歌を集め、編者がコメントをつけている本です。
サブタイトルが、「Born after 1970
1970年以降に生まれた歌人の歌だけを掲載しています。


「今どきの若いモンは」議論は尽きることがないですけど、
若いモンはけっこう偉いところもありますよね。

私は日ごろ公園で子どもを遊ばせているので見るんですよ、
小学生や中学生が、小さい子のジャマをしないように気を遣ってくれる様子を。

「そこ、小さい子おるから気をつけろよ」
「うん、わかってるって~」とか。
「よけてあげようよ」など、譲ってくれたり。

転んだら、「大丈夫!?」と駆け寄っていってくれる中学生もいます。

きっと大人たちには生意気な態度をとってるでしょうけど。
意外と未来は大丈夫だと楽観しています。



そしてこの本は、
短歌って高齢者の趣味やんなぁ?っていう思い込みを取っ払ってくれました。
短歌って囲碁より地味・・・渋い感じが(笑)ありません?

じつは楽しい♪
小説だとリズムが違うと読み続けられなくなってしまうんですけど、
この短さなら楽しめることが分かりました。

以下、私が面白いなと感じた短歌をいくつか紹介します。



大松達知(1970年生まれ)

なにゆゑかひとりで池を五周する人あり算数の入試問題に

できない子はこれができない教科書を
ノートにそのまま写す<写経>が



松木秀(1972年生まれ)

差別にもいろいろありて究極はジャイアンの言う「のび太のくせに」

「頑張った」高校野球を讃えたるひとたちが生むブラック企業



雪舟えま(1974年生まれ)

世界じゅうのラーメンスープを泳ぎきりすりきれた龍おやすみなさい

ふたりだと職務質問されないね危険なつがいかもしれないのに



石川美南(1980年生まれ)

わたしたち全速力で遊ばなきや 微かに鳴つてゐる砂時計

手を振ってもらえたんだね良かったねもう仰向けに眠れるんだね



笹井宏之(1982年~2009年)

「雨だねえ こんでんえいねんしざいほう何年だったか思い出せそう?」

音速はたいへんでしょう音速でわざわざありがとう、断末魔



加藤千恵(1983年生まれ)

ありふれた歌詞が時々痛いほど胸を刺すのはなんでだろうね

あいまいが優しさだって思ってるみたいですけどそれは違います



服部真里子(1987年生まれ)

春だねといえば名前を呼ばれたと思った犬が近寄ってくる


薮内亮輔(1987年生まれ)

暗やみにふればしばらく明るみで雪の最期は溺死か焼死


井上法子(1990年生まれ)

運命にしだいにやさしくなりひとは災いとしてすべてをゆるす






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2018. 04. 19  
誰を彼と われをな問ひそ 九月の
露に濡れつつ 君待つわれを



『小説 君の名は。(新海誠:著)』です。



大ヒットアニメ映画の監督自らが書いた原作小説です。
私はまだ映画の「君の名は。」を観ていないんですよね~。

最初は少し読みづらかったのですが、ちょっと話が進んで、
みつはちゃんがタキという男子高校生の身体になって目覚めたところとか最高に笑えました。


男の体っていったいなんなのよ!?
おしっこをしようとすればするほど、なんとか指で方向を定めようとすればするほど、
排尿困難な形状になっていくってのはどういうコトなんよ!?
アホなの、バカなの!?それともこの男がヘンなの!?



アハハ!高校生って大変なんやなあ。
ここ、映画ではどういう風に表現されてたんだろうと気になります。


新海監督の「あとがき」がありました。
なぜわざわざ小説を書いたのか?
映画の原作として話を創るのは当然だけど、別に小説にしなくてもよかったのです。
なぜ書いたのか・・・。


この物語はもちろんファンタジーだけれど、でもどこかに、
彼らと似たような経験、
似たような想いを抱える人がいると思うのだ。

大切な人や場所を失い、それでももがくのだと心に決めた人。
未だ出逢えぬなにかに、
いつか絶対に出逢うはずだと信じて手を伸ばし続けている人。
そしてそういう想いは、映画の華やかさとは別の切実さで語られる必要があると感じているから、僕はこの本を書いたのだと思う。



「それでももがくのだと心に決めた人」
こういう人を想像して創られたお話。
全編を通して星のような、ガラスのかけらのような輝きを放つ理由がわかりました。


冒頭に和歌を書きましたが、みつはちゃんの授業風景です。

「誰を彼(たれをか)、これが黄昏時の語源ね。
夕方、昼でも夜でもない時間。
人の輪郭がぼやけて、彼が誰か分からなくなる時間。
人ならざるものに出会うかもしれない時間。
魔物や死者に出くわすから『逢魔が時』なんていう言葉もあるけれど、
もっと古くは、『かれたそ時』とか『かはたれ時』とか言ったそうです」

「はーい、先生しつもーん。
それって『カタワレ時』やないの?」



カタワレ時がこの世ならざるものに出逢う時間。
そしてみつはのおばあちゃんの言葉。


「糸を繋げることもムスビ、人を繋げることもムスビ、
時間が流れることもムスビ、ぜんぶ、同じ言葉を使う。

それは神さまの呼び名であり、神さまの力や。

よりあつまって形を作り、捻じれて絡まって、
時には戻って、途切れ、またつながり。

水でも、米でも、酒でも、なにかを体に入れる行いもまた、ムスビと言う。
体に入ったもんは、魂とムスビつくで」



ムスビ。
過去の私にはムスビに捉われていたところがありました。
ムスビ(縁とかですかね)を辛く感じる自分が間違っているのだと、
これを乗り越えればいいんだと思おうとしていたなあって。

ムスビと一緒に、私は「ほどく」こともできることを忘れたくないなあと思うのです。
そう感じながら、ほどき過ぎてきてしまったのか・・?なんてことも感じたり。
どっちがよかったのか、今はよかったのだと思いたくて。


そしてこれからも、ほどいてはこんがらがって、
もがき続けることを選ぶだろうと思えます。
この小説、読んでよかった・・・。




みつはの住んでいる集落や彗星など、
映像の素晴らしさは映像でしか確かめられないですね。
だから、映画を観たくなりました。



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2018. 04. 18  
無理して全部飲み込まなくてもいいじゃない。
外に出すのはきれいで優しい言葉ばっかり。
そんなだからサヨリになっちゃうんだよ。



『居酒屋ぼったくり④(秋川滝美:著)』です。



普通の家庭で作れるような料理ばかり出すんだから、
「ぼったくり」と呼ばれるくらいでちょうどいいんだ。

こんな信条をもった両親が経営する居酒屋を引き継いだ美音(みね)と、
賑やかでクセのある常連客たちとが、美味しいものを食べて元気を出していく短編集。


今回紹介するのは春が旬の魚、「サヨリ」のお話。
短編の最後に必ず、作者のコラムがあるんです。
銘酒情報や簡単なつまみの作り方など。

サヨリのお話のコラムでは、
「なぜ、サヨリは腹黒いのか?」という豆知識でした。


サヨリは青白い半透明の、細長い魚。
捌くと中は真っ黒。
腹が、というより、腹膜が、なんですが。
サヨリは腹黒い

サヨリは昼行性の魚で、しかも海面近くを泳ぎます。
半透明の身は太陽光を通しやすく、身体を透過した紫外線が内臓にダメージを与えてしまいます。

そしてサヨリは植物性プランクトンをエサにしています。
もしも太陽光がお腹に届いてしまうと、生きたまま飲み込まれたプランクトンがお腹の中で光合成を始めてしまいます。

内臓へのダメージを防ぐ。
エサにしたプランクトンが光合成を行わないように。

そのためにサヨリは「腹黒く」なったそうです。


見た目の美しさと味の良さで「貴婦人」と呼ばれる一方、
昔は腹黒い人に対し、
「あの人はサヨリみたいだ」なんて言ってたらしいです。
(私は今まで聞いたことがありませんでしたが)


生き物ってすごいですよね。
理由のないことなんて、何一つないです。
合理的。


小説では腹黒人間は出てきません。
逆に、善い人すぎじゃないかと、美音は心配しています。

まったく愚痴も弱音も言わない常連客に、

「悪口を言う人はいい印象を与えない。
けれど、普段から黙々と頑張っている人が、耐えかねたように漏らす悪口はちょっと違う」


こう思いやってしまうのです。


誰にもなんにも辛いことや怒っていることを言わず、自分の中に溜め込んでいるような人。
きっといますよね。

溜め込むことがうまく発酵してくれればいいのですが。

もしかすると腐敗してしまう危険性もありますよね。
ちょっとぐらいなら、言っても大丈夫ですよ。

腐敗してしまったら、大爆発してしまいます。


無理して全部飲み込まなくてもいいじゃない。
外に出すのはきれいで優しい言葉ばっかり。
そんなだからサヨリになっちゃうんだよ。



看護では人体の勉強から入ります。
それで分かったのは、人の身体ってパイプだなということ。

入ったら出る、これがスムーズにできない身体が病気を起こす。

心も同じなんじゃないでしょうか。

いらないもの、あったら毒素になるものは排出しなくちゃいけない。
言っても大丈夫な相手に、
「今日だけ言わせて!」と吐き出す。

これって、言われたほうは
「信頼されてるんだな」と嬉しいものなんですよね。

だから。
大爆発してしまう前に、ちょっと吐き出す。

腹黒いのは黒いかもしれないけど、
美味しいサヨリのようにいい味を出す人間になれる。
そんな風に感じます。




滅多に弱音を吐かないあなたを尊敬しています☆



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プロフィール

馬場亜紀

Author:馬場亜紀
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本の中の心に刺さる一文をご紹介いたします。
看護師免許をもっていますが、今は保育の仕事をしています。自身の子育ても真っ最中。
くわしくは「自己紹介」をご覧いただければ嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします☆

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