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イヤなアイツの魂はどうなるか、「黒猫の小夜曲」

2018.04.30(06:55) 653

反吐が出るほどの醜さや残忍さと、感動するほどの優しさと気高さ、
その両方を内包する存在。
本当に人間とはよく分からない。

『黒猫の小夜曲(知念実希人:著)』
です。



現役内科医であり作家の知念氏の小説です。

以前、『優しい死神の飼い方』を紹介しましたが、その続編にあたります。
『優しい・・・』の主人公だった死神・レオの同僚が、黒猫の姿で登場。
未練を残した魂を救い、主のもとへ導く任務を与えられたのでした。
名前は、黒猫だから、クロ。


前作もそうだったんですが、医師である知念氏のメッセージは「今を生きることを大切に」というもの。
ここは変わりません。


人間は限られた時間の中を必死に生きるべきなんだよ。
いつ『最期の刻』を迎えてもいいように。


 ずっと必死にやってきたんだ。

なら、君は誇っていいんだよ。自らの人生を。


人間とは弱くてもいじらしさがある。
そんな優しい心が表れていると思えます。

反面、そうじゃない人間もいるのだということも表しています。

小説は推理仕立てになっているのであらすじは内緒にしておきますね。
ラスト近く、クロは犯人と対峙します。
そのときのクロ。

この男・・・魂がとてつもなく穢れている。
高位の霊的存在である僕すら飲み込んでしまうほどに。
これまで人生で、どれだけのことをしてきたんだ?



死神が近寄れないほど、穢れた魂をもつ人間が登場しているのです。
知念氏はそんな人間も見てきたのかなあと想像してしまいます。


幸運なことに、私は魂が穢れていると思えるほどの悪人に関わったことがありません。
しかし多くの患者さんと接してきた著者は、そういった人にも出会ったのでしょうか。


どんなに悪人でも、治療しなければいけないのです。

どんなに悪質な、凶悪なことをしてきた人間にも、平等に治療しなければならない。
どんなに自業自得だとしても、今、必要最低限の生活が保障されていない人間には社会保障をせねばならない。

医師と行政はこれが義務なのですよね。
考えさせられるんです。
してもらうのが当たり前じゃない、
保障・治療に見合った最低限の人間性は保たなければいけないと。

ちょうどヤフーニュースに、「患者の院内暴力」が挙がっていました。
患者・患者家族が、医療スタッフに暴言・暴力・セクハラ、支払い拒否などを行い、病院側が疲弊してしまうというものでした。


なんだろ・・・立派な人間になんてなれないんだけど、
せめて嫌がられず治療してもらえる、援助してもらえるような人間でありたいなと、
切々と感じるのです・・・。


著者がどう思って書いたのかは分かりませんが、
穢れた魂は成仏できずに、苦痛の末、消滅させられています。

くやしい想いをしてきたのかなあ・・・。



自分に与えられたわずかな時間を輝かせるために、
合理性よりも感情を優先して行動するのさ。


死神・レオは人間をこう捉えています。
人間は残忍なのか気高いのか謎だと思っていたクロ。
優しさを知っていくクロの姿が愛らしいです。

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下を向いて歩こう、「バッタを倒しにアフリカへ」

2018.04.29(06:55) 651

上を向いて 歩こう
涙が こぼれないように
思い出す 春の日 一人ぼっちの夜
  (「上を向いて歩こう」 作詞:永六輔)

『バッタを倒しにアフリカへ(前のウルド浩太郎:著)』
です。



緑の変なカッコ・・・著者本人です。
こんなカッコでも昆虫学者(バッタ博士)。
夢は「バッタに喰われること」。
大好きだけどバッタアレルギー。ややこしいですね。

この本は西アフリカ・モーリタニアで研究活動した記録、それにかかる費用をどう捻出したかの奮闘記。


なぜバッタの研究をアフリカに行ってやるの?
それって大切な研究?
っていうか、喰われたいってどういうこと?

そんな風にしか思えなかったのです。
昔々の日本でイナゴ大発生で農作物の被害なんてことは知っていますが、現在はありませんし、ましてやバッタ。


神の罰、バッタの大量発生


でも関係あるんです。
今でも数年に一度は西アフリカなどではバッタの大量発生による、
農作物壊滅の被害が起こっているのです。

これを現地の人は、「神の罰」と恐れているのです。


大被害により、世界流通に影響が出ます(野菜や果物などの高騰)。
バッタ駆除には今のところ殺虫剤を使うしか方法がなく、
そのために一帯の畑・植物・微生物に至るまでダメになるほどです。

日本は2004年に3億3千万円の支援出資をしています。
無関係じゃなかったのでした。


現地で生きているバッタを観察研究し、殺虫剤に頼らない防御策を立てること。
バッタ発生を予測して予防をできるようになること。

博士はこれを目指してアフリカに行ったのです。
しかし問題は、お金。
研究費用が出るのは2年間だけ(全く足りない)。
それ以降はお金も出ないし、就職先も決まっていませんでした。

自分の貯金を切り崩しながらの現地生活。
研究は進んでいない、あと1年しかない・・・どうしよう・・・。
どん底まで落ち込んでいたんです。不安しかなくて。


そんなとき、お世話になっているモーリタニアのバッタ研究所所長が励ましてくれたのです。

「いいかコータロー。
つらいときは自分よりも恵まれている人を見るな。
みじめな想いをするだけだ。
つらいときこそ自分よりも恵まれていない人をみて、自分がいかに恵まれているかに感謝するんだ。
嫉妬は人を狂わす。
お前は無収入になっても何も心配する必要はない」


この所長は気遣いの達人なのです。
「日本人は花がなければ生活できないんだろ?」と、
ゲストハウスの玄関に花や木を植えてくれたりするんです。

その励ましでバッタ博士は立ち上がれました。


上を向けば涙はこぼれないかもしれない。
しかし、上を向くその目には、自分よりも恵まれている人たちや幸せそうな人たちが映る。
その瞬間、己の不幸を呪い、より一層みじめな思いをすることになる。
私も不幸な状況にいるが、自分より恵まれていない人は世界には大勢いる。
その人たちよりも自分が先に嘆くなんて、軟弱もいいところだ。
これからつらいときは、
涙がこぼれてもいいから、
下を向き自分の幸せを噛みしめることにしよう。



歌もいいんですけど、下を向いて涙をこぼすこともアリなんだ。
じ~んときます。
この本で唯一しんみりするところです。

他はすべて悪戦苦闘を笑いに変える!
その文才が恐ろしすぎます(笑)。

お金の工面も類まれなるバイタリティで獲得。
表紙のインパクトそのままの内容です。



「はあ?バッタ?」
そんなことを言わず、一度パラパラと読んでみていただきたい1冊。

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科学者の目線で。『決してマネしないでください』

2018.04.28(06:55) 647

心が折れた。。。
「もっと折れ。折れば折るほど人としての厚みが増す」
「そうです。新聞紙でも42回折れば厚みが月まで届きます。
71回折れば、25光年先の織姫(ベガ)まで届くんですよ」


『決してマネしないでください(蛇蔵:作画)』
です。



理系大学が舞台のマンガです。
科学に親しめるような学習マンガという触れ込み。
楽しい読み物として大成功しています。

ちなみに新聞紙を23回折れば、東京スカイツリーの高さと同じ、
26回折れば、富士山の高さと同じになります。


話の幹として、掛田くんの片思いがあります。
学食のおばちゃん=飯島さんにドキドキする毎日。
だけどまともに会話ができません。

冒頭の「心が折れた」もうまくいかなくて落ち込んでいるところです。
それを友だちが励ましているのです。
新聞だって折れば月まで届くぞ、と。


「年下はダメなのかな」と悩む掛田くん。
掛田くんは21歳、飯島さんは24~25歳。

ボヤキを聴いた(学食の)通りすがりの人たち、
「それって大きいかね?」

「気候変動の研究をしている僕からすると10年ぐらいは誤差だ」
「地質の研究をしている俺からすると1000年ぐらいは誤差だ」
「銀河の研究をしている私からすると10000年ぐらいは誤差だ」



科学の視点は素晴らしいですね。
こんなことを聞いたら、プハッと大きく息を吐き出して笑えます。

この「プハッ」のとき、今までしっかり呼吸すらしてなかった!?と気づいたり。
自分の中の狭い常識や思い込みを銀河の彼方へ飛ばしてくれます。


大体のことは一度や二度や三度や四度失敗する。
勝負はそれからだ!!



物事をいろんな角度から見てみること。
科学者のような視点から見てみることが、実生活に役立てるのかもと思えました。

出てくる数字が大きいですもんね。

「元気だして、星の数ほど女性はいますよ」
「2000億もいませんよ」
「肉眼で確認できる星は北半球で4300個。
肉眼で認識できる女性の数とほぼ同数だぞ」
「でも星には手が届かない」


あらら。
自分が元気になれる使い方を☆


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心も体も同じこと、「ラブという薬」

2018.04.27(06:55) 650

閉ざしていた人の扉が開くと、表情が柔らかくなります。

『ラブという薬(いとうせいこう・星野概念:著)』
です。



作家と精神科医の対談というか公開カウンセリングのようになっています。
悩みを打ち明けているとかそんなのではなくて。
「精神科には気軽に早めに行こうよ」というメッセージです。


精神科受診なんて、人目が気になる。
頭がおかしいと思われる・・・。
これが一般的なイメージではないでしょうか。

うつ病患者数
1996年は約43万人
現在、112万人以上。年々増加中。
この数字は受診している人のみです。

ブラック企業で働いて、うつ病、その果ての自殺。

このようなニュースが出たら、ブラック企業が悪いと世論はいいます。
けれど、自殺しないうつ病に対して世間は冷たすぎませんか?

心を強くすればいい。
がんばれない言い訳でしょ

こんな感じで。
これはおかしいと私は思っています。
死ぬまでやらなきゃ労わってもらえないなんて。


怪我なら外科、辛い気持ちなら精神科。


たったこれだけのことなんです。
先生は言います。

精神的な病気っていうのは、
ひとつは「傷」、ひとつは「弱さ」。
弱さの場合は、「もっと強くなれ」って言われるし、
傷の場合は、「なんでそんな傷を受けたんだ」って言われる。
それで傷ついた人が泣き寝入りしなきゃいけない。
要は「泣き寝入り文化」なんだよね。



まずは精神科への偏見や尻込みをなくしてほしいというお話。
そしてもうひとつ。


なんでも言っていいんですよ。


「この薬、なんか違うと思うんです」
「診断に疑問があります」

言いにくいと思ってしまいますが、言っていい。


ダメな医者もいる。変だと思ったら他の医者にかかる。
その動きが大きくなれば、ダメな医者も反省する。



このお医者さん変だ、自分には合わないと感じたら、
違うお医者さんに診てもらって構わないですよ、というお話。


これって、体の病気や怪我のことでも同じだと思いませんか?
もらってる薬を飲んだらいつもダルくなるんだよなあ・・・
でも先生が言ったんだから、間違いないんだよなあ・・・みたいな。

こんなことがあっても言いにくいと思って言わないことがありませんか?

言っていいんですよ。
言われて怒り出したら、そのお医者さんはダメなんです。

いいお医者さんなら、
「じゃ、似たような効果のある薬で様子をみましょうか」と、別の薬を処方してくれるのです。

星野先生は、自分の腕を試されてるようなファイトが沸いてくるそうです(笑)


体も心も、病院受診は同じ。
我慢して我慢してどうにもならなくなってから受診したら、
「なんでこんなになるまで放っておいたんだ!!」と叱られますよね。

内科でも精神科でも同じなんですね。
歯医者さんも一緒ですね(笑)
やっちゃいますよね?ギリギリまで行かないって。


これくらいで受診したらダメかな・・・とかじゃなく、
変だと感じたら病院で診てもらう。

大ごとになる前に行くほうが治りも早いのです。




忘れられない患者さんがいまして。
胃潰瘍で入院されていた、公務員の男性。
物腰も柔らかく、ベッド周りの整理整頓もきちっとされていました。

ところが1週間ほど経ったころ、様子が変わりました。
身だしなみができなくなり、ろれつも回っていません。
「ここの看護師長はおかしい!」と怒りだしたり。

その男性、うつ病治療中ということを内緒にしていたのです。
入院中は出された薬しか飲めないので、精神科でもらっていた薬は飲まなかったのです。
そうしたら症状が悪化して・・・。

最初に「精神科から処方されています」と言ってくれてたら、
副作用が出ないような薬を一緒に出せたのに。

看護師にもいえなかったという、精神科受診を隠したい心理。
こういったものをなくしていける社会になってほしいのです。


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自分をちっぽけだと感じたら、「喜びは悲しみのあとに」

2018.04.26(06:55) 648

これ知ってればくじけないよ
もう、わかったでしょう
喜びは悲しみのあとにかならずやってくる


『喜びは悲しみのあとに(上原隆:著)』
です。



以前『友がみな我よりえらく見える日は』を紹介しましたが、
続編のような形のルポ、ノンフィクションです。

著者が取材を行う目的、それは、

つらいことや悲しいことがあり、自分を道端にころがっている小石のように感じる時、人は自分をどのように支えるのか?

これを知りたいと、それだけを思って話を聴くそうです。


いろんな人がいて、いろんな人生がありますね。
重い障害をもって生まれた子どもの介護をしていた父親。
戦力外通告されたプロ野球選手。
親が離婚し、母の恋人に暴力を振るわれた過去を持つ男性。
「リカちゃん人形になりたい」という欲望を叶えた青年。

他にもズンとくる人生を歩んだ人の話が掲載されています。

これらを読んでどう感じるか。
なんとなくなんですが・・・
もう死語でしょうか、「サシで飲む」なんてこと。

1対1で静かに飲みながら、ポツリポツリと近況やそれにまつわる心境を告白するというか、ただ語るという。
決して愚痴めいているのではなく。
でも明るい話題でもなく。

この本を読んでいたら、サシで飲んでるときのような心地になりました。

なんにもアドバイスはできないし、
励ますのもはばかれる。
「うん、そうなんだ・・・うん・・」と相槌をうつくらいしかできなくて。


でも、別れ際に、
「じゃ、また明日」と軽く笑って帰ることができる。

いい日になるかどうかは分からなくても、
明日を待てるかなと思えるくらいの明るさは戻ってくるような。


この本のはじめに、キャロル・キングの「喜びは悲しみのあとで」の訳詩が載っていました。


つらい過去を話してくれた友だちが
こういったよ
「人生でやらねばならないことなんて
案外いま、やってることだったりするのよ」

ね、あなたは暗くならないで
いまはつらいだろうけど
みんなそうしてる、あなたも大丈夫
これ知ってればくじけないよ
もう、わかったでしょう
喜びは悲しみのあとにかならずやってくる

(キャロル・キング作詞、原題「Bitter with the sweet」)


いい歌詞やなあ。
この本のための歌みたいに思えます。




全体的に暗めです。
今、落ち込んでいる・暗めだ~という人におススメ。
絶望読書系の、絶望しなくなる不思議な力のある本。


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2018年04月
  1. イヤなアイツの魂はどうなるか、「黒猫の小夜曲」(04/30)
  2. 下を向いて歩こう、「バッタを倒しにアフリカへ」(04/29)
  3. 科学者の目線で。『決してマネしないでください』(04/28)
  4. 心も体も同じこと、「ラブという薬」(04/27)
  5. 自分をちっぽけだと感じたら、「喜びは悲しみのあとに」(04/26)
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