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死ぬってなんだろう、『跡を消す』

2019.01.31(08:00) 699



今回は、現役看護師のデビュー作『跡を消す(前川ほまれ:著)』という小説を紹介します。


特殊清掃会社「デッド・モーニング」に入社した青年が、社長とともに前進していく姿を描いたもの。

特殊清掃。
重労働の掃除会社ではありません。
わけありの死に方をした人の遺体・遺品を片付ける会社なのです。

人が亡くなって数日・数ヶ月たつと、「腐敗」が進み、
「溶ける」。

その溶けて染み込んだ床には死者の影が・・・。

ぞわぞわ~っとしてきます。
読んでいる途中、「うっ・・・」となってくる描写も。

看護師さんなら、死にゆく人は見るでしょうけど、死んで数日後なんて見ることないでしょうに。
綿密に調べたんだろうと想像できます。

なにより著者の、死に対する姿勢というものが好ましく感じました。

怖れるもの・汚らしいものではない。
作中には、青年がハエ・蛆だらけの部屋で遺品片付けを吐き気をこらえて処理しているんですが、その様子を見た女性が、


「アンタにとっては汚いゴミでしかないかもしれないけど!これはここで生活していた人が生きてる間使っていたものなんだよ!!
それに対してその態度はないんじゃない!?」



こんなことを言う場面があるんですね。

ぐっときました。

生きてる人と死んだ人。
その壁、みたいなものって、どんななんだろうって。

ブロ友さんが紹介していらっしゃる動画で、魅入ってしまうものがありました。
  ↓↓↓↓
死にゆく単細胞生物
1分53秒の動画です。最後は、「え?え?」と不思議な感情に襲われてしまいました。

ゾウリムシなどの単細胞生物って、死なない、と考えられていたそうです。
彼らは分裂していくから。

研究が進み、分裂できない環境を作ることで、彼らにも老化・寿命というものがあることがわかってきたそうです。
単細胞生物の寿命は、私たちの生きる時間感覚とは別モノ。

分裂回数によって寿命が決まっているそうです。
個体によって、生涯の分裂が150回なのか300回なのか、もっと多いのか。
サイクル期間も2ヶ月なのか4年なのか20年なのか、そのあたりはまだ謎のようです。
(私の拙い理解ではそんな感じです。興味をもたれたかた、ぜひお調べください。そして教えてください笑)

この動画のゾウリムシ、なんとはかない最期なのか。
流れでていくものたちを、両手で掬い取ってそのまませき止めていたくなる。

人の最期も、最期になって、あわててせき止めていたくなる。



跡を消す 特殊清掃専門会社デッドモーニング (一般書 210) [ 前川 ほまれ ]


まったく小説の内容と関係ない感想になってしまいました。
ストーリーもさることながら、前向きに「死」を考えました。
死ぬことを考えると、結局、どう善く生きようかということにたどり着いてしまいますね。
読後感がいいので、こういう風に感じることができたと思います。


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天皇を守ったアメリカ人、「屋根をかける人」

2019.01.29(08:00) 710

私たちはいずれ、地球そのものを覆う広大な一枚の屋根をかける人になりましょう。きっとです。


『屋根をかける人(門井慶喜:著)』です。


屋根をかける人


実在した人物、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏を題材にした小説です。
私はメレル氏のことを知りませんでした。
この小説を手にした理由は、『銀河鉄道の父』の著者の作品だったからです。
重厚な歴史小説を好むかたには、おすすめしません。
歴史小説を読みなれていない私には軽快によめる文体で一気読みできました。

明治時代
キリスト教布教
建築家
日本に帰化
商売人
「天皇を守ったアメリカ人」と呼ばれている

本の帯にはこんなキーワードが並んでいました。

物語は、メリル氏が来日した明治38年(1905年)から、日露戦争・第一次世界大戦・関東大震災・太平洋戦争と時代を駆け抜け、昭和39年(1964年)に永眠するまでのメリル氏の人生が描かれています。




いろんな才覚をもっていたメリル氏。
建築家として会社を経営する手腕。
「メンソレ-タム」を日本で初めて販売し、現在の「近江兄弟社メンターム」の創始者でもあり。

デパートの「大丸心斎橋店」がメリル氏の設計だったと知って驚きました。

実在の人物を元にした「フィクション」となっています。
登場人物たちの会話などは著者の想像でしょう。
しかし、そのセリフたちがとてもいいのです。


「私たちは信仰のあるなしにかかわらず、
おたがいの魂をむかえ入れ、やすらかに生活の一部を共有しようという話です。
あたかも日本家屋のごとく、人数が少ないなら少ないなりに、多いなら多いなりに」

「むかえ入れたら、どうなります」
「世界に通じる人になれます。
家には屋根がある。屋根というのはアメリカ人でも日本人でも、ペルシア人でもアフリカ人でも、ひとしく風雨から守る。その下にあたたかい団欒の場をつくる。
私たちはいずれ、地球そのものを覆う広大な一枚の屋根をかける人になりましょう。きっとです」


建物をつくる理念は、

健康で、
過不足のない、
心やすらかな空間を。

でした。


「人は人を裏切りますが、利を裏切ることはしません」
「商売というのは汚くやれば汚くなる。正しくやれば正しくなる。
結局は、心のもちかたなのです」

メリル氏は、奉仕と、商売で利益を上げることをきっちり区別している人でした。


「非常時は、理由になりません。彼らは未来の日本なのです」
これはメリル氏の妻のセリフ。
疎開中の子供たちが教育を受ける機会をなくしてしまっていることに心を痛めて、尽力する人でした。



時代の流れを感じるために読むのもいい。
メリル氏の商売の真髄をとらえようと読むのもいい。


屋根をかける。

壮大なことはしようとも思わないんですけど。
自分自身が屋根の役割をするのはいいかなあと思えます。
小さな家(家族)を雨風から守る。
雨ざらしに、あえて、なる。
それならばやっていきたいですねえ。


屋根をかける人


114年前の今日(1/29)、メリル氏は日本の土を踏みました。


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万人に合うアドバイスってあるのかしら?

2019.01.28(08:00) 704

「たゆまざる 歩み恐ろし カタツムリ」


長崎の平和記念像を制作した彫刻家・北村西望の言葉です。

この名言が生まれたエピソードがあります。

ある朝、北村が平和記念像を観にいくと、
像の足元に1匹のカタツムリが目に入った。

夕方、もう一度像の前に行くと、北村は愕然とした。
朝見たカタツムリは、10m近い像の頂にまで上っていた・・・。


ひとつのことを、たゆまず続けることの尊さをしみじみと想い、
この言葉が生み出されたという。

もうひとつ、カタツムリに関するお話(今回はマンガ)を紹介します。

『サラリーマン拝!(吉田聡:作)』より


サラリーマン拝! コミック 1-9巻セット (ビッグコミックス)


「いっつもトロくさいね。
津村のかたつむり~」

こう言われ続けてうだつの上がらない津村という社員。

いつ仕事してるのか謎、でも営業成績バツグンの拝(おがみ)が、津村に「カタツムリ」の話をします。

「ノアの方舟に、かたつむりも乗っていた事 知ってますか?

創世記7章、鳥・獣・すべての地を這う生き物がノアの元に来た。
かたつむりは、どんなにのろくても
歩くのをやめなかったから、救われたんです」


「こんなぼくも・・・方舟に乗れるでしょうか・・・」

「さあ・・・それはきみ次第・・・」

翌日。

エレベーターに乗り遅れた津村は笑顔でこんなことを言ってます。

「のんびり行くよ。
他人が一日でやる仕事を一週間かかっても、
それでも会社へ来てれば、なんとかなってるワケだし。
マイペースでのんびり進むよ」


ゴガッ!!(後ろから拝が飛び蹴りしてきた)

「全開で行け!!
かたつむりなめてんのか、コノヤロー!!」



ゆっくりでもいい。

これをどんな人が、どう受け止めるのか。
その人によって行動も結果もガラリと変わってしまいますね。

みんなに合うアドバイスって、あるのかしら。
これこそ、昔から言われている、

あちらを立てれば、こちらが立たず。

みたいなもの?
本当にその人のためを思って何か意見を言うということは、
その人がどんな人かを興味深く関心をもってからじゃないと、親切なやさしさにはならないんだなあ。

津村さんのためになりそうなアドバイスなら、
どこかに無駄があるのかと見直すことだったかもしれないですし。

うわべの、聞こえのいいもので適当にいいこと言って済ませるようなことはしないようにと、自戒です・・・。


それにしても、
「たゆまざる 歩み恐ろし カタツムリ」の言葉は、今の私には心強い励ましです。

焦らず、10年後に実を成らせるくらいのスパンで。


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祈りと呪い。「20光年先の神様」

2019.01.26(08:00) 665

祈りとは、今を生きるためにあるものなのか。

『20の短編小説』という、「20」をテーマにした短編を20編集めた小説集です。
その中の、「20光年先の神様(木皿泉:著)」を紹介します。


20の短編小説 (朝日文庫)



中学生の和美は、クラスメイトのナホに陰湿ないやがらせを受けました。
そのとき、和美は祈ったのです。

「神様、もしおられるのなら、トージナホを殺して下さい。
できるなら、私の目の前で苦しみながら死なせて下さい」



そして40年後。
和美は看護副師長として、ナホは末期ガン患者として再会します。

手術をして、容態が安定していたナホが急変。
もうダメだろうという状態になりました。


「神様はいる」
神様は、きっと二十光年先にいらっしゃるのだ。
和美の願いが神様の元に届くまで二十年。
神様がその願いを和美のところまで届けるのに二十年。
四十年前に祈ったことを、今すぐキャンセルして下さいと祈っても、
すぐにはかなえてくれない。
そういう、取り返しのつかない時間の中に、私たちは生きているのだ。



和美が「祈り」だと想ってやったことは、「呪い」。
これを読んで恐ろしいなと感じたのは、
「もしもこの祈りが何十年先に叶うことになったとしても、そのときの自分は叶った喜びを感じるだろうか?そう思える内容を祈っているんだろうか?」ってことでした。


私も過去、心の底から存在が消えてほしいくらいの人がいました。
祈らずに、自分から離れることで開放されましたけど。

あのとき祈っていなくて本当によかったと思えます。
もしも10年後に叶っていたとしても、まったく嬉しくなかった、むしろ、苦い思いを味わっていただろうと思えますから。

自分の行動次第でどうにか離れられることなら、安易に呪わないほうが健全でいられる。

逆に。

何十年たっても呪いが叶って嬉しいと思えるのならば、
それはその人にとっての「祈り」と言ってもいいと思う。
どんなひどいことを呪っていたとしても。
それだけの想いを生きるエネルギーにしてこれたという意味で。

でもできるなら、祈りは朗らかなものにしたいなあ。
叶わなくて当然、叶ったらラッキーくらいの。



20の短編小説 (朝日文庫)


すべての祈りと呪いを叶えるほど、神様はサービスしないでしょうねえ。
それでも、ただ祈りたいときはあります。
そんなときは、祈っておきます。


今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。

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拗ねたら負け、『天国マイレージ』

2019.01.24(08:00) 702

人生は『拗ねたら負け選手権』だ。


愛する家族を残してあの世へ行ってしまった男性が、
息子に「心から笑う方法」を伝えるために、同級生の姿になって1週間だけ共に過ごす。
かなりファンタジーな設定なのに、自然と笑って読める小説です。

『天国マイレージ(樋口卓冶:著)』


天国マイレージ



「すごく大変そうだけど・・・」
「大丈夫。拗ねなきゃ、必ずこたえが出るから」
「拗ねなきゃいいの?」
「そう、最後まで拗ねないで、佳子先生を笑顔にしようよ。
人生は『拗ねたら負け選手権』だ



拗ねる。

漢字の威力が100%発揮されている言葉です。
幼稚な手段イコール、拗ねる。

拗ねているその真意は、
「言わなくても分かってよ。
でも分かったようなことを言われたらさらに拗ねるからね。
というより、自分で自分の機嫌を直せないから!」

こんな想いがあるような。(自分を振り返って)

言わない・言えないままだと、人生選手権脱落。
それはなにかに負けるとかよりも、自分の納得いくものが少ない人生を送ることになるのかなと想いました。

「言えると癒える」という人もいるくらいですし。
ここにも言葉の威力をみますね。


人生は拗ねたら負け選手権。

覚えておきたくなりました。
なにより、相手にものすごいストレスを与える手段ですもんね。
一人っきりで拗ねることってありませんよね。
必ず、相手ありき。
ホント、拗ねないでいよう・・・。




天国マイレージ


徳を積んでいた人は当然、天国行き。
もう一つ、天国に行ける方法があります。

たくさん笑った人。

人を笑わせなくてもいいんです。
自分が現世でたくさん笑っていたらいいんですって。

こうなったら余計に天国に行けなくなる人が増えるのか。
はたまた、行ける人が増えるのか。

「たくさん笑ったら極楽へ行ける」
こんな宗教があってもいいな。



今日も読んでくださってありがとうございます♪


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2019年01月
  1. 死ぬってなんだろう、『跡を消す』(01/31)
  2. 天皇を守ったアメリカ人、「屋根をかける人」(01/29)
  3. 万人に合うアドバイスってあるのかしら?(01/28)
  4. 祈りと呪い。「20光年先の神様」(01/26)
  5. 拗ねたら負け、『天国マイレージ』(01/24)
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