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2018. 03. 24  
『情熱のナポリタン(伊吹有喜:著)』を読んでいました。



そうしましたら、芥川龍之介の『蜜柑』という短編が出てきました。
この短編のことを話している登場人物たち。

「あの弟たちは幸せになったんですかねえ」

「幸せになったに決まってるだろ」
「暖かな日の色に染まった蜜柑は希望の光、幸運の前触れ」



こんな会話をしていて、どうにも気になって、
途中で『蜜柑』を読んでしまったのです。



5分ほどで読み終えてしまえる短編でした。
一人の男性が汽車に乗っています。
そこへ娘がやってきて。

その娘の下品な顔だち、不潔な服装に不快になる男性。
しかもその娘、汽車がトンネルに入ったのに、窓を開けるのです。

煤だらけになりむせ返る男性はさらに不快になります。
ほとんど憎んでいます。

トンネルを抜けた汽車から見える風景は、貧しそうな田舎町。
そこに3人の男の子が見えます。精一杯なにかを叫んでいます。

それを見た娘は、抱えていた蜜柑をその子たちに投げます。


心を躍らすばかり暖な日の色に染まっている蜜柑が凡そ五つ六つ、
汽車を見送った子供たちの上へばらばらと空から降って来た。

私は思わず息を呑んだ。そうして刹那に一切を了解した。
小娘は、恐らくはこれから奉公先へ赴こうとしている小娘は、
その懐に蔵していた幾顆の蜜柑を窓から投げて、わざわざ踏切まで見送りに来た弟たちの労に報いたのである。



この男性は、疲れていました。
正体のわからない疲労と倦怠でいっぱいでした。

座席で開いていた新聞には、その倦怠を表すかのような平凡な記事ばかり。

汽車と、田舎者の小娘と、平凡な記事に埋っている新聞が、
不可解な、下等な、退屈な人生を象徴していたのです。


そんな男性が、娘が投げた蜜柑を見て、


得体の知れない朗な心もちが湧き上がって来るのを意識した。

こう感じるのです。
蜜柑を投げた娘の想いや弟たちを想像するのも心温まるものがあるのですが、
私は男性がこの光景で朗らかになれたことに感動します。

どんより灰色に染まった心が、蜜柑のキラキラした橙色で明るくなる。
不可解で、下等で、退屈な人生を忘れることができたのです。

この小説が書かれたのは大正ですが、今もさほど変わりはないのでは?

毎日陰鬱な、あるいは馬鹿げたニュースばかり、
誰もが疲れていて、つまんなそうにしていて、
つまんないからスマホを見てるのに、
それでもまだ、つまんなそうにしてる。


蜜柑が希望の光、幸運の前触れ、とあったのは縁起物に使われるからでしょうか。
お正月の蜜柑も、本当は橙を飾るけれど、庶民も手にしやすい蜜柑が主流です。
雛飾りのみかんの木みたいなのは、「橘」。

色が太陽みたいだからかな。
冬至には柚子ですしね。


疲労と倦怠の毎日の中で、どれだけ心を躍らせるものを見つけることができるのか。
きっと見渡せば、心朗らかにさせてくれるものはある。
それに気づけるかどうか。
この男性が気づけたんだから、現代でもそれは、できますよね。



この作品が気に入ってしまった理由は、
実家に帰ったら蜜柑がダンボール箱いっぱいにあったからかも。

愛媛に住んでいる叔父が作っていて、私たちが帰る時期に合わせて送ってくれたもの。
その他にもはっさくや「あんせいかん」というすっごい皮が厚い柑橘も。
家の中に太陽がいっぱい。

いよかんやデコポンも今が旬ですね。
太陽をいっぱい食べて、この2週間は希望に満ち溢れています。



今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。

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読書をしないのもいいもんだ。
ありがとうございました!
中間点で会いましょう
やりたくないけどやらなきゃいけない。
車の運転が下手なんですけど、いい方法は?
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壇蜜日記
窓を開けた時の風圧で新聞が読んでいる人の顔にバシャッと覆い被さりコントロールを失ったみかんがそこに飛んでこなくてよかった。動いている車両からモノが飛んだら凶器ですよwすいません、今日はどのTバックにしようからしら…そんな、壇蜜のエッセイを先ほど2、3ページ読んでアンインストールした後だったのでちょっと乱れました。
こんばんは♪
私はミカンが昔から大好きです♪
美味しいですよね(*^▽^*)

平凡な日常にミカンのようなキラキラしたなにか
いつも見つけられたらいいな(*^^)v
No title
ミカンはこたつに入って家族で食べる。
昔から団欒の象徴みたいなものでしたからね。
この男性がホッコリしたのも分かる気がします。
それにしてもSLに乗っていてトンネルで窓を開けるのはあり得ません。
そんなことを思ってしまいました。
Re: 壇蜜日記
aiupaさま、コメントありがとうございます。
芥川はそこまで病んでいなかったみたいでよかったです(笑)。
壇蜜さんも、ミカンも、「蜜」つながり。甘く、でも赤ちゃんには毒となる蜜・・・。
私は紙で壇蜜日記をもってます。暗く淫靡なところがとても良いのです。
Re: こんばんは♪
ふたごパンダさま、コメントありがとうございます。
ミカンが嫌いという人がいるの?ってくらい、日本の代表果物ですよね、ミカン。

そういや、大阪のおばちゃんはミカンを持ち歩くといいますが、本当です。
ウチの子、知らないおばちゃんからミカンもらったことがありますw
そして今日お出かけしましたが、私のリュックにはミカンが入っていました。
幸せのキラキラした日でした☆
Re: ミドリノマッキーさまへ
コメントありがとうございます。
冬の幸せの象徴でもありますね、ミカン。
そうですか、汽車に乗っているとき、トンネルで窓を開けるのはホントにダメなんですね。
どんだけすごいことになるんでしょう・・・。
この男性、口をきくのも嫌だったのか、ここで怒鳴るのは大人の態度ではないと自制したのか・・・どちらでしょうね。
No title
こういうのを日常生活で気がついた瞬間に、人生も悪くないな、って思いますよね^^ちょっとした発見で、人間って幸せになれるんだな、と。仕事が忙しかったり、色々なことを不愉快になっているときなんて、格別、そのすばらしさが感じられたことでしょうね^^
Re: 八咫烏(全力稼働中)さまへ
コメントありがとうございます。
疲れた自分がちょっとしたことに気づけたら、それもまた、「まだ大丈夫やな」って思ったりしますよね。
こんにちは!
柑橘系は、息子の得意とする果物、
今夜買って帰ろかな?

何事も「きっかけ」
それに「気付き」でしょうか?
Re: こんにちは!
ダリルジョンさま、コメントありがとうございます。
ビタミン補給にも最適ですよ、柑橘系!ぜひぜひ家族分買っていってくださいな♪

きっかけ、タイミング、でも「気づかなきゃ」どうにもならないですからね。
気づける感性を持っていたいなと思います。
はじめまして
いつも楽しく拝見させてもらっています。

「蜜柑」、私は中学の教科書にでていて読んだのを覚えています。

芥川が最初、娘を本当に意地悪く描写した後に、あの蜜柑を投げるシーンが出てきてパーっと世界が明るくなる感じがしたのが印象的でした。

心が温かくなるいい小説ですよね。
半年くらい前に、ふとこの小説のことを思い出したりなんてこともありましたが、忘れがたい作品です。
Re: はじめまして
まやとさま、こちらこそいつも拝見して勉強させてもらってます。
コメントありがとうございます☆

教科書にありましたか。私が使っていた教科書では、芥川作品は「トロッコ」と「鼻」、「杜士春」かな?
はじめて「蜜柑」を読み、今の自分だからこそこの短編に感動できたんじゃないかと思っています。
子供のときには分からなかっただろうと。
そうそう、本当に娘のことを意地悪に表現していて、短いなかにこれだけ読者を不快にさせ、爽やかに明るくさせ・・・文学の力を感じます。
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プロフィール

馬場亜紀

Author:馬場亜紀
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本の中の心に刺さる一文をご紹介いたします。
看護師免許をもっていますが、今は保育の仕事をしています。自身の子育ても真っ最中。
くわしくは「自己紹介」をご覧いただければ嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします☆

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