祈りとは、今を生きるためにあるものなのか。
『20の短編小説』という、「20」をテーマにした短編を20編集めた小説集です。
その中の、「20光年先の神様(木皿泉:著)」を紹介します。

20の短編小説 (朝日文庫)
中学生の和美は、クラスメイトのナホに陰湿ないやがらせを受けました。
そのとき、和美は祈ったのです。
「神様、もしおられるのなら、トージナホを殺して下さい。
できるなら、私の目の前で苦しみながら死なせて下さい」
そして40年後。
和美は看護副師長として、ナホは末期ガン患者として再会します。
手術をして、容態が安定していたナホが急変。
もうダメだろうという状態になりました。
「神様はいる」
神様は、きっと二十光年先にいらっしゃるのだ。
和美の願いが神様の元に届くまで二十年。
神様がその願いを和美のところまで届けるのに二十年。
四十年前に祈ったことを、今すぐキャンセルして下さいと祈っても、
すぐにはかなえてくれない。
そういう、取り返しのつかない時間の中に、私たちは生きているのだ。
和美が「祈り」だと想ってやったことは、「呪い」。
これを読んで恐ろしいなと感じたのは、
「もしもこの祈りが何十年先に叶うことになったとしても、そのときの自分は叶った喜びを感じるだろうか?そう思える内容を祈っているんだろうか?」ってことでした。
私も過去、心の底から存在が消えてほしいくらいの人がいました。
祈らずに、自分から離れることで開放されましたけど。
あのとき祈っていなくて本当によかったと思えます。
もしも10年後に叶っていたとしても、まったく嬉しくなかった、むしろ、苦い思いを味わっていただろうと思えますから。
自分の行動次第でどうにか離れられることなら、安易に呪わないほうが健全でいられる。
逆に。
何十年たっても呪いが叶って嬉しいと思えるのならば、
それはその人にとっての「祈り」と言ってもいいと思う。
どんなひどいことを呪っていたとしても。
それだけの想いを生きるエネルギーにしてこれたという意味で。
でもできるなら、祈りは朗らかなものにしたいなあ。
叶わなくて当然、叶ったらラッキーくらいの。

20の短編小説 (朝日文庫)
すべての祈りと呪いを叶えるほど、神様はサービスしないでしょうねえ。
それでも、ただ祈りたいときはあります。
そんなときは、祈っておきます。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。
『20の短編小説』という、「20」をテーマにした短編を20編集めた小説集です。
その中の、「20光年先の神様(木皿泉:著)」を紹介します。

20の短編小説 (朝日文庫)
中学生の和美は、クラスメイトのナホに陰湿ないやがらせを受けました。
そのとき、和美は祈ったのです。
「神様、もしおられるのなら、トージナホを殺して下さい。
できるなら、私の目の前で苦しみながら死なせて下さい」
そして40年後。
和美は看護副師長として、ナホは末期ガン患者として再会します。
手術をして、容態が安定していたナホが急変。
もうダメだろうという状態になりました。
「神様はいる」
神様は、きっと二十光年先にいらっしゃるのだ。
和美の願いが神様の元に届くまで二十年。
神様がその願いを和美のところまで届けるのに二十年。
四十年前に祈ったことを、今すぐキャンセルして下さいと祈っても、
すぐにはかなえてくれない。
そういう、取り返しのつかない時間の中に、私たちは生きているのだ。
和美が「祈り」だと想ってやったことは、「呪い」。
これを読んで恐ろしいなと感じたのは、
「もしもこの祈りが何十年先に叶うことになったとしても、そのときの自分は叶った喜びを感じるだろうか?そう思える内容を祈っているんだろうか?」ってことでした。
私も過去、心の底から存在が消えてほしいくらいの人がいました。
祈らずに、自分から離れることで開放されましたけど。
あのとき祈っていなくて本当によかったと思えます。
もしも10年後に叶っていたとしても、まったく嬉しくなかった、むしろ、苦い思いを味わっていただろうと思えますから。
自分の行動次第でどうにか離れられることなら、安易に呪わないほうが健全でいられる。
逆に。
何十年たっても呪いが叶って嬉しいと思えるのならば、
それはその人にとっての「祈り」と言ってもいいと思う。
どんなひどいことを呪っていたとしても。
それだけの想いを生きるエネルギーにしてこれたという意味で。
でもできるなら、祈りは朗らかなものにしたいなあ。
叶わなくて当然、叶ったらラッキーくらいの。

20の短編小説 (朝日文庫)
すべての祈りと呪いを叶えるほど、神様はサービスしないでしょうねえ。
それでも、ただ祈りたいときはあります。
そんなときは、祈っておきます。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。