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2020-09-29 (Tue) 05:11

本が人を繋ぐ、『図書室のキリギリス』

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過去に戻れるとしたら、
高校の図書室に行きたい。そんなことを思ってしまいました。
『図書室のキリギリス(竹内真:著)』です。



離婚して働かなければならなくなった詩織さんが、
高校の図書室に勤務することになりました。
詩織さんと高校生たちが、本で繋がっていく物語。

本が好きな人なら共感したり、感心したりする場面がたくさん。
なんともいえない心地良さの中で読書できました。

終盤は、本のあらすじや感想を伝えるのではなく、
聞いてる人に「読みたい」と思わせることをしゃべる、
「ブックトーク」が連続していて、
読みたくなる本がいくつも登場してきました。

高校生の瑞々しい感性から紹介される本は、魅力でいっぱい。
若さならではの視点って、大切ですね。


すごくよかった『図書室のキリギリス』、
好きな一文はこれでした。

ネットのネガティブな噂より、現実世界でのポジティブな思いの連鎖に
目を向けてほしい。
自然の中で命が繋がっていくように、人の思いも脈々と繋がっていく。
そうやって生まれた本があることを、図書館を通して伝えたかった。


この背景はですね、

読書習慣のない高1男子が、
「星野道夫がクマに襲われた写真が本に載ってない」と、
詩織さんに文句を言うんです。

詩織さんは「そんな写真あるわけない」と言うんですが、
男子は、「ネットで見た」と。

後日、「あの写真は間違いです」との記事が発表され、
男子が間違っていたことがはっきりするんですが。


そのとき詩織さんが、
星野道夫の「命を讃歌する」想いを知ってもらいたいと、
彼に、『旅をする木』を読んでみてと勧めるのです。
その時の気持ちが上記の文章になっています。



ショッキングなことやネガティブなことって、
広まりやすいし、信じられやすいですね。
今年はそれが顕著になりました。

けれども、生きることのきらめきや、喜び。
まさに「命を讃歌する」想いたちもたくさんある。

それらはいろんな表現方法として私たちに提供されますが、
「本」は、言葉でダイレクトに伝わってくるところが、
他の表現より優位です。
(だからこそ、ネガティブもダイレクト……)

『図書室のキリギリス』では、
「命の讃歌」を感じた高校生たちが、
その感動を人に伝えたいという思いが溢れている。
そこがとても瑞々しくって心地良いのです。


読んでいて、一読者である自分も、
彼らの仲間に入っている感覚になりました。
こういうあやふやなものでも、「繋がってる」って感じられるなあ。
そんなことを嬉しく思いながら。


みんな、自分の感じる好きなものに関わることで、
何かと自然と繋がれているんですね。
強制や無理強いや暗黙の了解なんてややこしいものはなし、
自然と、繋がれる。




本書に登場した本たちも読みたいし、
『図書室のキリギリス』の続編も読みたい。
読みたいものばかり増えていきます。



最終更新日 : 2020-09-29