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2020-10-24 (Sat) 05:11

『雲を紡ぐ』、感触は本当の自分の気持ちとつながってくる

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自分がいったい何をしたいのかわからなくなった時は、
暖かくて柔らかいものに触れればいいんだなって思う。
『雲を紡ぐ(伊吹有喜:著)』です。



「笑い方がキモい」と言われたことから不登校になった美緒。
祖父の「羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげる」仕事を手伝ううちに、
自分の好きなこと・やりたいことに気づいていく物語です。


事情があってほとんど交流のなかった祖父だけど、
孫を思う気持ちと職人としての矜恃からくる言葉に、
何度も涙がこみ上げてきました。

「羊毛は死んだ動物のものじゃない。
生きている動物の毛をわけてもらうんだ。
だから人の身体をやさしく包んで守ってくれる」


毛糸の暖かさは、生きている動物から分けてもらってる…。
ああ、だからいつの時代も冬には毛糸のモノが愛しくて
手離せなくなるのかー。

「心にもない言葉など、いくらでも言える。
見た目を偽ることも、偽りを耳に流し込むことも。
でも触感は偽れない。
心とつながっている脈の速さや肌の熱は隠せないんだ」


この言葉にふと妄想をしてしまいます。
もしも、スマホやゲームのコントローラーが、
ふわふわ・もこもこ・ぷにぷにした素材でできていたら。
この世界はものすごくやさしくなっているんじゃないかって。

カバーの素材じゃなく、本体そのものが柔らかく、です。

もう高性能・高機能のアプリとか動きは、私はいらない。
それより、触って気持ち良いものがあったら、そっちが欲しい。

触感が心とつながっているのなら、
柔らかいモノを増やしていくっていうのは、
あながち間違っていないんじゃないかな?

小説では、固く閉じこもった美緒の心は、
柔らかく暖かいモノに包まれて、安心できるようになりました。

まず安心しないと、次に進めない。
安心したからこそ、自分の好きなこと・やりたいことに向き合えた。

世の中、不安が多すぎるんですよね。
情報は幸せになるためのものだけど、逆効果が大きい。
ならば、物理的に、身近に触れるものから安心を得られるような、
そんな取り組みって、いいんじゃないかなあと。
妄想ばっかりですけどね。


小説のラストはこう締め括られています。

真白な羊毛を空にかざし、美緒は微笑む。
雲を紡ぐ。光を染めて、風を織る。
そうして生まれた布は人の命をあたたかく包んで未来へ運ぶ。
イーハトーブの町で見つけたものは、美しい糸の道。
光と風の布とともに、私はこれから生きていく。



暖かく柔らかいものから生きる力を得る。
私はそれは本当だと思います。



雲を紡ぐ (文春e-book)



最終更新日 : 2020-10-24