吉報配達ブログ

ひっそり咲いている名言に、光を当てる

2020-09-26 (Sat)

美しすぎる貝たち、『ときめく貝殻図鑑』

美しすぎる貝たち、『ときめく貝殻図鑑』

ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。吉報を届けることができますように。『活版印刷三日月堂 海からの手紙(ほしおさなえ:著)』を読んでました。活版印刷という昔の印刷方法を復活させた弓子さんのもとに、今日も依頼人がやってきて、自分のなすべきことを見つけていく物語。以前紹介した本の続編です。今回もとてもよかった。そして今回は、このなかに出てきた「貝」にちなんだ本を紹介します。「テンシノツバサ...

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『活版印刷三日月堂 海からの手紙(ほしおさなえ:著)』を読んでました。



活版印刷という昔の印刷方法を復活させた弓子さんのもとに、
今日も依頼人がやってきて、自分のなすべきことを見つけていく物語。

以前紹介した本の続編です。
今回もとてもよかった。
そして今回は、このなかに出てきた「貝」にちなんだ本を紹介します。


「テンシノツバサ」という名前の貝が登場したんです。

斜めに細長い形をした二枚貝だ。
真っ白くて、両の貝を並べて置くと、天使の翼そっくりになる。



気になったので「貝の本」を検索してみると、ありました。
『ときめく貝殻図鑑(寺本沙也加:文)』です。



天使が海に落とした一対の翼
テンシノツバサ(天使の翼)



英名も「エンジェル ウイング」です。
天使がそっと畳んだ翼がそのまま貝になったよう。

美しい……。

この図鑑で気づいたんですけど、
貝につけられてる名前が、貝とは思えない名前が多い。

素敵やなあと思った名前をいくつか挙げます。
一行目がキャッチコピー(笑)、二行目が貝の名前です。

美しき海の花冠
テンニョノカムリ(天女之冠)


みんな大好き海のハート
リュウキュウアオイ(琉球葵)


汽水のシマウマ
テマリカノコ(手鞠鹿子)


海に舞い降りた桜のひとひら
モモノハナ(桃之花)


砂浜にきらめく宝石みたいな微少貝
シロオビモモイロオトメフデ(白帯桃色乙女筆)


深海にひそむ日本の「心」
ニッポンオトヒメゴコロ(日本乙姫心)


深山幽谷の奥ゆかしさ
マルオミナエシ(丸女郎花)


砂浜のデコレーションケーキ
ユメハマグリ(夢蛤)


蒼鷹丸が見つけた雪空
ユキゾラホトトギス(雪空時鳥)



ものすごーいトゲが特徴の貝にも、

閻魔大王の名がつく荒々しき貝
エンマノホネガイ(閻魔之骨貝)




縄文時代、貝を食べて命を繋いできた日本人。
食料としてだけではなく、
貨幣になり、財宝になり、装飾品になり。

古代ローマでは、「紫色」を抽出するために、
巻貝から染料をとっていたとか。
1グラムを抽出するために貝2000個が必要で、
その紫で染めた衣装は貴人のためのものになったとか。


貝の名前なんて、
冠に似てるなら「かんむり貝」、花びらに似てるなら「花びら貝」。
そんなんでいいじゃない?ってなってもおかしくなかった。
なのに、素敵な名前をつけている。

貝からもらった恩恵の気持ちを、
素敵な名前をつけることで恩返ししてるかのようです。



『活版印刷三日月堂』に次の文章があります。

貝がらは、貝が一生かかって作る形だ。
きっとそれは貝の魂の形なのだ。



貝自身の分泌液で貝殻が形成されていきます。
それは貝の一生が終わるまでずっと成長しつづけて。

どの貝もひとつとして同じ形・同じ模様なんてない。
どれもそれぞれの美しさ・愛らしさ・雄々しさがある。

人と同じでした。




Amazonアンリミテッド読み放題対象本です。
見やすいし、貝についてのあれこれがわかりやすく書かれています。
貝のことなんて、あさりやホタテなど食べる貝数種しか知りませんでした。
貝殻、ものすごく美しいです。

貝の情報が多い「鳥羽水族館ホームページ」も載せておきます。
「リュウキュウアオイ」や「エンマノホネガイ」の写真もあります。
図鑑よりも種類が豊富です。さすが!





このシリーズ好きです。
活版印刷もいいけど、モチーフになるものもすごく好き。
今回は「あまんきみこ」や「新美南吉」の作品が登場して、
そちらも読みたくなりました。


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2020-09-25 (Fri)

無名の人々の生き方、『灯台からの響き』

無名の人々の生き方、『灯台からの響き』

ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。吉報を届けることができますように。灯台は、すべての人間の象徴だ。無名の人々の真摯な生き方を丁寧に描く長編小説、『灯台からの響き(宮本輝:著)』です。妻と二人三脚で切り盛りしてきた中華そば屋の店主、康平の灯台巡りの旅を描きつつ、心模様を写し出しています。妻に先立たれてしまい、店も閉めてしまった康平。本の間に隠されていたハガキをきっかけに、灯台を巡る旅に...

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ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。
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灯台は、すべての人間の象徴だ。



無名の人々の真摯な生き方を丁寧に描く長編小説、
『灯台からの響き(宮本輝:著)』です。



妻と二人三脚で切り盛りしてきた中華そば屋の店主、
康平の灯台巡りの旅を描きつつ、
心模様を写し出しています。

妻に先立たれてしまい、店も閉めてしまった康平。
本の間に隠されていたハガキをきっかけに、
灯台を巡る旅に出て、店を再開させる決心をしたり、
家族や友人の心情に思いを馳せたりしていきます。

この小説では、「灯台」が市井の人々を象徴しています。

空の色と海の色と霧の色によって、
灯台はみずからの色を消してしまったかに見えるが、
びくともせずに、日が落ちると点灯して航路を照らしつづける。
多くの労苦に耐えて生きる無名の人間そのものではないか。
(中略)
それぞれに多彩な感情があり、勇気があり、
口をつぐんで耐えつづける日々があり、
ささやかな幸福の積み重ねがあり、慈愛があり、闘魂がある。
灯台は、すべての人間の象徴だ。



灯台が守っているものは船だけではないんですよね。
船に乗っている人たちを安全に守り導いている。


灯台に縁もゆかりもない土地にしか住んだことがないので、
今まで灯台に思いを馳せたことはなかったんです。

ですがこの小説を読んで、いくつかサイトをみたり、
動画を見たりしたら、

灯台って、人間が作った星みたいやなあと思いました。

なんとなく、星に思いを寄せてしまうものじゃないですか。
見守ってくれてる、とか、道標になってくれてる、とか。

灯台と似てる。
というか、灯台こそ本当に見守ってくれて、道標そのものです。

黙々と生を営む無名の人々によって歴史がつづいていく。
地味で、滋味深いものを大切にしたくなった。
そんな小説です。



灯台からの響き


説教臭く感じる人もいると思います。
ですが、こうして叱ってくれる人もめっきり減りました。
じっくり諭してくれる小説が残っていてほしいです。

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2020-09-24 (Thu)

ペットを飼うことの責任感、『猫のいる日々』

ペットを飼うことの責任感、『猫のいる日々』

ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。吉報を届けることができますように。動物モノが続きます(動物好きなので読み出すと止まらない)。『猫のいる日々(大佛次郎:著)』です。猫のいる日々 (徳間文庫)『鞍馬天狗』の作者なんですね、知らなかった…。愛猫家で有名だった大佛氏の、猫愛が満ち満ちている一冊です。家には常に15匹前後の猫がいたらしいです。どのエピソードも笑わずにはいられないほど、猫中心の家。...

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ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。
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動物モノが続きます(動物好きなので読み出すと止まらない)。
猫のいる日々(大佛次郎:著)』です。


猫のいる日々 (徳間文庫)


『鞍馬天狗』の作者なんですね、知らなかった…。

愛猫家で有名だった大佛氏の、猫愛が満ち満ちている一冊です。
家には常に15匹前後の猫がいたらしいです。
どのエピソードも笑わずにはいられないほど、猫中心の家。
猫中心というか、猫に振り回されてよろこぶ日々(笑)


すごく面白かったのは、空襲中のこと。
お隣さんは庭に防空壕をつくっていらっしゃったそうです。
ある日、空襲警報が鳴りました。
大佛氏は縁側で空をボーッと眺めていました(呑気すぎる)。

すると、大佛家の一匹の猫が、
隣の家から鮭の切り身をくわえて帰ってきて、
美味しそうにむしゃむしゃ食べていた。
そしてまた別の一匹が隣の家から鮭の切り身を・・・。

どうやらお隣さんは食事の途中で防空壕に入ったらしくて、
大佛家の猫はちゃぶ台の上のごちそうを・・・どろぼうねこ・・・。

謝りに行きたいけど行けないし・・・と悩む大佛氏。

空襲警報が鳴る非情のなか、
なんてのどかな日常が行われていることかと、
思わず微笑んでしまったエピソードです。


猫好きの家、と知られていたため、
猫を捨てにくる人も後をたたなかったようです。

冷然と、他人のところに迷惑と負担をつけて猫を投げ込んでいく世間の良家の人々は、
何とけしからぬ動物どもであろう。
苦しい生活をして働いているひとなら、こうしない。
紳士淑女のしっぽのやつらで高級の方でないことは確実である。
(中略)
私はインテリ家庭の人道主義を信用しない。
猫を捨てるなら、こそこそしないで名前を名乗る勇気をお持ちなさい。



昭和37年に書かれたエッセイなんですけどね。
厳しい言い方をしたくなる気持ちはわかります。
今はもっともっと、けしからぬ動物が増えました。
飼ったならば一生、大切にしなくては。


動物とともに暮らし、豊かで潤いのある生活を願う。

この願いに水を差すような人々が減りますように。



猫のいる日々 (徳間文庫)


Amazonプライム会員ならばどなたでも読めます。
(アプリのダウンロードは必要ですが)

短いエッセイばかりなので、どこから読んでもだいじょうぶ!
愛情溢れた文章を読むと、こちらにも影響が。
大切にしているものを、なおさら愛でたくなります。
愛情感染。

大佛氏の絵本『スイッチョねこ』の一文です。
いい言葉やなあ。

じょうぶで生きていれば、この世の中がどんな時もたのしいし、
よいものだと知っていましたから、朝起きるのをたのしみに、
ぐっすりと、よくねむるのでした。
いつも目をさますと、きのうとちがう新しい朝が来ています。



 
  
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2020-09-23 (Wed)

理想的なコミュニケーション、『はしっこに、馬といる』

理想的なコミュニケーション、『はしっこに、馬といる』

ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。吉報を届けることができますように。ウマは「なにも起こらない」おだやかな状況に、幸福を感じる生き物です。動物愛護週間なのでもう一冊くらいは動物関連本を。『はしっこに、馬といる(河田桟:文と絵)』です。東京で編集やライターの仕事をしていた河田さんが、日本最西端・与那国島に移住し、野生の群れからはぐれた仔馬の「カディ」と暮らすお話です。暮らす、というより、...

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ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。
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ウマは「なにも起こらない」おだやかな状況に、
幸福を感じる生き物です。


動物愛護週間なのでもう一冊くらいは動物関連本を。
『はしっこに、馬といる(河田桟:文と絵)』です。



東京で編集やライターの仕事をしていた河田さんが、
日本最西端・与那国島に移住し、
野生の群れからはぐれた仔馬の「カディ」と暮らすお話です。

暮らす、というより、一緒にいる。
そんな1人と1頭のコミュニケーションの取り方を語っています。

本の中でも書かれていますが、通常の「人間と馬」の関係を作るとか、
そういうのとは全く違っていますので。

私は、すべての人間関係の理想的な形を見せてもらえたと思っています。


ほんとうにたいせつなのは、なにも起こっていないように見える
時間の積み重ねのほうかもしれません。


河田さんは性格的にも体力的にも、馬と上下関係を作るようなことには
向いていませんでした。
ならばどうやってカディと付き合っていこう……。



その結論は、「なにもしないヒト」になることでした。
最低限の日常の世話、
ご飯をあげる、手入れをする(うんちを片付ける)くらい。
世話以外は、ただそばにいるだけのヒトになる。

わたしとの関係がどうであれ、カディが、
すこやかに、きげんよく生きていてくれるなら、
それでじゅうぶんだと思いました。


ただそれだけを願った、それが「なにもしない」でした。

そしてどういうことが起こったか。

特別なにもしなくても、心が通じるようになった。


そう思えるようになったと書いておられます。

この態度・行動こそ、「愛する」ことなんですね。

馬だけじゃなく、動物だけじゃなく、
子供とか、家族とか、すべての関係性がこうやって成り立つ。
すごくいいなあと感じました。



ただ、相手のすこやかときげんの良さを願う。
たとえ、自分が相手に嫌われてても関係ないのです。

そして、「通じてる」と自分が思えていれば、
それはもうそれで自分が幸せになれる。

実際の作られてるものがどうであってもいいのです。
自分の「思い」だけで幸せになれる。

「ただそばにいて」愛する。
できそうでできないことなんですけど、
できればとても豊かなものが広がってきます。
それがこの本にはペン画の可愛らしい馬のイラストとともに
溢れています。



はしっこに、馬といる ウマと話そうⅡ


本文に入る前の文章を抜粋します。素敵な暮らしぶり。

夜、ウマのカディがどこで眠っているのか、
わたしは知りません。
森のどこか居心地のよい場所で、
あたたかい闇に包まれながら寝ているはずです。

夜明けまえ。
わたしは車に乗って、カディのところへ行きます。

聞こえるのは、
風の音、遠くの海鳴り、虫の声。
まだ暗いので、鳥は鳴いていません。

わたしは、すわったり、寝転んだり、歩いたり、
ぼんやり考えごとをしています。
近づいたり離れたりしながら、
なにをするということもなく一緒にいます。

空の色が変わっていきます。

すっかり明るくなったら、
ごはんをあげて、手入れをして。
気が向いたら、一緒に散歩にでかけます。

カディとわたしは、
そんなふうに暮らしています。




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2020-09-22 (Tue)

いいものは無くならない、『活版印刷三日月堂』

いいものは無くならない、『活版印刷三日月堂』

ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。吉報を届けることができますように。『銀河鉄道の夜(宮沢賢治:著)』のジョバンニが働いていたのが、活版印刷所。その活版印刷所が舞台の小説、『活版印刷三日月堂 星たちの栞(ほしおさなえ:著)』です。活版印刷とは、昔の印刷方法の名称です。活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚、手作業で言葉を印刷する。祖父が営んでいた活版印刷所を受け継いだ弓子さんと、お客さんたち...

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ありがとうございます。吉報配達ブログへようこそ。
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『銀河鉄道の夜(宮沢賢治:著)』のジョバンニが
働いていたのが、活版印刷所。
その活版印刷所が舞台の小説、
『活版印刷三日月堂 星たちの栞(ほしおさなえ:著)』です。



活版印刷とは、昔の印刷方法の名称です。
活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚、
手作業で言葉を印刷する。

祖父が営んでいた活版印刷所を受け継いだ弓子さんと、
お客さんたちの温かい交流を描いています。

活版印刷の文字を、こんな文章で表現しています。

くっきりした文字だった。
「刻まれている」と感じた。
ふつうの印刷だと紙に文字が「張りついている」感じだが、
これは凹んでいるわけではないのに「刻まれている」。
文字ひとつひとつが息づいているみたいに見える。



ほとんど廃れてしまった活版印刷です。
理由は、技術の進歩によって、
より早く・きれいに(均一に)・安く印刷できるようになったから。

値段がどれだけちがうのか。
名刺1枚の値段を比べてみると・・・

ネット印刷で注文→ 5円
活版印刷で注文→100円

コスト20分の1で印刷できるようになったんですね。
これが100枚となると、500円と10000円の差。 
現代でどちらが選択されるか、淘汰されるか。
明らかだったんですね。


でも今、活版印刷の人気がじわじわ上がっているそうです。
グッと刻まれたような滋味がいいと。

皮肉なものですね。
昔の印刷屋さんたちは、
いかにきれいに・ムラなく・早く仕上がるかに懸命になってた。
その結果が現代の印刷技術。

それなのに今は、
間違いやムラや滲みが「いい味」と喜ばれるのです。 


ささっと薄い紙に乗っかるように書かれたものばかりになってて、
まるで人生すらそんな感じのようになってて。

でも本来、人の歩みや時間は「刻まれて」きたんですよね。 
そういう表現、ありましたよね。
言わなくなったけど。

言わないけど、なくならない。
いいものは、なくならない。
みんな、わかってるんだと思います。無意識で。

そんな確信をもてました。この小説を読んで。



([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)



活版印刷はどういうもの?
「活字を拾う」ってなに?がわかる動画があります(8分16秒)。
活版印刷職人

壁にびっしり並ぶ「活字」は壮観です。


 
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